現場研修が必須なニトリの採用が話題になっていた。
採用できるのこれ…
— てろりー (@terurou) January 23, 2023
IT人材として入社した場合、最初の1年半は現場研修に出てもらいます。店舗を1年、物流部門を半年経験してもらって、ニトリグループの業務について学んでもらいます。https://t.co/KEzanXchPp
ニトリは素晴らしい会社である。業績も良い。年収もそこそこ高いらしい。私は年収 1000 万は超えているが、自宅の家具の多くはニトリ製だ。ありがとう。
しかしながら、1 年半も現場研修に出されるのは、会社の方針としては否定しないが、エンジニアのキャリアとしてはマイナスである。
1 年半もあれば、他に学べることはたくさんあるからだ。 ニトリに新卒で入った子が現場研修に 1 年半も行っている間に、大学の同期のエンジニアは 1 年半もの開発経験を積んでいるわけだ。
「エンジニアに 1 年半も現場研修は厳しい」と、同じような感想を抱く人は多いだろう。
そんな現場研修否定形の意見に対して、こんな反論もあった。
こういうの嫌がる人多いだろうけど、現場を知らないで机上の空論で生きてる園児ニア様は事業会社では要らないんすよ。
— いずみん (@izumin21504115) January 24, 2023
準委任契約で作ったら後は終わりですじゃないし、結果責任を負って自分の作った物の効果を確認するまでやるんです。
自社開発ってそう言うことよ。 https://t.co/dWv4xWgRdt
この方は妙に攻撃的だが、おそらく時間の大切さを理解できていない。
現場に 1 年半も配属なんてものは、キャリアにおいて「その現場がとても重要な意味を持つ人間」がやればいい話であって、自分である必要はない。
ニトリに例えるならば、終身雇用上等で、ニトリに定年まで骨を捧げるつもりの人ならば、現場研修に 1 年でも 2 年でも行くべきだ。
トヨタで定年まで働く人にとって、自動車の工場研修がとても重要なのと同じだ。 現場を知らなければ、ユーザーの気持ちはわかるまい。
しかし、そうではなく、転職を視野に入れて経験を積んでいきたいのであれば、1 年半の現場研修は無駄が多すぎる。
転職先で 1 ミリも活かせないからだ。
ツイッターの人物は「自社開発ってそういうことよ」などと得意げに語っているが、自社開発の選択肢は他にもある。 お前が視野が狭いだけだ。世界は広い。
自社開発ってそういうことマンよ、お前は黙ってニトリに行け。 俺は行かない。
「自社開発そういうことマン」のようにキャリアに対して園児のように呑気な人間であれば、1 年でも 2 年でも現場研修をやればいい。
だが人生は短い。1 年半も開発と無関係な現場で業務知識を学んでいる暇などないのだ。
ニトリで経験を積んで他に転職するならば、ニトリの現場で積んだ 1 年半のほとんどが無駄になる。
「私のキャリアに無駄などない。あの日あのとき現場で学んだ"心構え"こそ、その後の私のキャリアを作ったのだ」
などと語る、偉そうなジジイはたくさんいる。そんなものは全部後付けである。
成功したら何とでも言えるが、「心構え」はその現場でなくても学べた可能性の方が高い。
大切なのは、成功者のポジショントークに振り回されずに、自分のメリットだけを見つめることだ。
人生に寄り道は必要というが、凡人は無駄が少ない道を進むべきだ。
「ニトリで現場を学んで物流業界に行けばいいじゃないか」と言う人もいるかもしれないが、物流大手はシステム開発を外注しているし、外注先は大手 SIer なので、業務知識を活かせる転職となると、大手 SIer の物流部門しか選択肢がなくなる。
ソフトウェアエンジニアとしては「詰み」だ。
簡単な詰将棋のように、「詰み」が予想されるキャリアを選ぶ意味はあるだろうか?
ニトリで「王」となるか、ソフトウェアエンジニアとしては「詰む」か、あるいは凡庸な歩兵としてニトリの盤面で一生を終えるか。
どうせなら、ソフトウェアエンジニアとして業界を自由に飛び回る「飛車」を目指さないか?
「現場を知らないで机上の空論で生きてる園児ニア様は事業会社では要らないんすよ」とか言ってる奴は完全に無視していい。
「お前が代わりにやってくれ。関わることはないだろう。あばよ」と言えばいい。
ドメインの理解は必要だが、かけた時間は基本的に無駄になる
システムを作るためにドメイン知識は絶対に必要である。
このブログではたびたび例に出すが、エムスリーなどのエンジニアは医療辞典のようなものを手元に置いて開発を進めている部隊もあると聞いた。
ドメイン理解のため期間限定なので納得できるような気はします。
— sakira3.1 (@sakira) January 24, 2023
「IT人材として入社した方は、情報システム改革室に所属し、IT人材としてキャリアを積めることをお約束しています。本人が希望せずに、店舗などへ突然異動になることはありません。 」
ともあるし。
システム開発に業務の理解は不可欠だ。 しかしながら、そこで学んだ業務の知識は転職先では全く活かせない。
ハードスキル、ソフトスキル、業務知識があるが、エンジニアの転職で最も役に立たないのが業務知識である。
本当に何の役にも立たないので、この記事を読んだ人は忘れないでほしい。
ただ、金融業界のエンジニアをやって、外資系金融機関のシステム部門のエンジニアとして転職する...などの道はもちろんある。
業務知識を活かすエンジニアになりたいなら、金融系 → 外資金融エンジニアは年収アップに良さそうだが、それ以外の道に行く場合には無駄になる。
あと、シンプルに業務知識がややこしいシステムは面白くないし、面倒くさいし、責任も重いし、保守的でスキルアップも望めない可能性が高い。
頭の悪い人は「責任が重ければ儲かる」とか言うが、責任が重く業務が複雑なシステムを作って儲かるのは会社であり、お前ではない。
複雑な業務システムで稼ぎたければ起業すればいい。雇われの分際で、金と責任を結びつけるのは、現実を歪んだ目で見つめている無能である。
特に金融などの toB で感じる「責任」は「顧客に詰められる」などの後ろ向きな責任で、メリットはない。
自主的に責任を感じながら、チャレンジしやすい業務のほうが面白いに決まってる。
かけた時間に対してどれだけリターンがあるかを考えなさい
銀行でエンジニアとして働いて、将来はバフェットコード作って独立するんだ!と野心がある人は、大いに銀行のエンジニアをやればいい。
ドメイン知識が将来役に立つ。そうじゃないなら、業務はわかりやすいところでエンジニアをやった方がいい。 業務知識に費やす時間は必要最小限にするべきだ。なぜなら、大半は無駄になるから。
雇われの分際で、そのドメインで将来ビジネスを作る気概もないくせに、「現場の知識こそが重要だ!現場で働け、いつまでも」などという奴隷のような人間の意見を聞いてはいけない。
人生は短い。時間は限られている。
だからこそ、業務知識の習得に無駄に時間を費やすわけにはいかない。 雇われの人間の、「仕事の意識が低い!会社のために粉骨砕身、業務に邁進するべきだ」みたいな発言は全部無視していい。
そいつはたぶん貧乏だ。視界に入れるべきではないのだ。