「年収を下げるような転職をしてはいけない!」と話題になっていました。
転職エージェントのモロー氏が、「今の実力に見合わない年収をもらっている場合は、年収を下げてでも経験を積み直す道もありなのではないか」とツイートしたのが発端です。
「今の市況感で経験者のエンジニアが年収を下げて転職しないといけないケースなど、あるわけがない」と思う気持ちはわかりますが、残念ながら今の職場での年収とスキル・経験の間でのギャップが大きい人は一定数います。なかなかレガシーな環境であるものの、年収はそこそこ高くなってしまったケースな…
— IT菩薩@モロー(毛呂 淳一朗) (@it_bosatsu_moro) March 6, 2023
スキル・経験と比較すると給料をもらいすぎていて危機感がある場合には「少し年収を下げてでも2~3年で生涯年収が増えるだけの経験が得られる職場を早めに選び直す」が鉄則ですが実践できる人は少ないです。一度提示された年収が市場価値だと信じたい気持ちはわかりますが、そうとは限りません。
— IT菩薩@モロー(毛呂 淳一朗) (@it_bosatsu_moro) March 5, 2023
このツイートに対しては次のような反論がありました。
- 年収を下げてしまうと、次の転職も「下げた年収」が基準になってしまう
- 同じ職場で、年収を下げずに経験を積むべき
- 年収を下げずに新たな経験を積む道を探るべき
私は「年収を下げて新たな経験を積む道」については、半分反対、半分賛成です。実際に「年収を下げて転職した経験」があるので、その経験を元に説明します。
年収を下げると、次の転職では「下がった年収が基準」となる
初めての転職などでは気付かないかもしれませんが、年収 1200 万の人が年収 600 万に下げて転職してしまうと、その次に転職するときは「600 万円」が基準になります。
転職活動では
「今の年収はおいくらですか?」
と聞かれて、その年収水準を元にオファーが決まることが多いです。
前職の経験値+新しい職場での経験値がプラスされて、できることは増えるはずですが、基準となる年収は「現職の水準」なのです。
もちろん、「面接の評価で年収を決めてください」と言うこともできますが、「年収を教えて下さい」と言われて、「やーだよ、教えないよーお前が評価しなよー」と言い返すのは抵抗がある人が多いでしょう。
「下げた年収 + 200 万円」みたいなオファーが出るため、1 度年収を下げてしまうと、「まず元の年収を取り戻す」という一手間が発生してしまうのです。
年収の低い業界から儲かる業界へ職種チェンジした場合はすんなり年収を取り戻せますが、通常であれば元の年収水準を取り戻すまでに 3 年以上はかかるでしょう。
1 度年収を下げて、1 年後に転職。 その 2 年後にもう 1 度転職して、やっとプラマイゼロに戻る...みたいなことになりかねないです。
新たな経験と引き換えに、相当の収入を失うことになります。 「新たな経験によって失った収入を取り戻す自信」がある場合のみ、年収を下げる転職を選ぶのもありですが、年収を下げる転職は人生で 1 度だけにするべきです。
ちなみに、最高年収である Google でレイオフされた人などはその限りではありません。 Google をクビにされて、同じ年収で転職できる日本人はほとんどいません。
Google で年収 2000 万だったからといって、別に優秀であるとも限りませんので、採用しても割に合わない可能性も高いです。
年収が上がるかどうかは、「どこで働くか」が 9 割です。本人の実力や優秀さではなく、働いている会社によって年収は決まります。
同じ職場で年収を下げずに経験を得るべき
では、「年収を下げずに新たな経験を積めばいい」という説についてです。
スキルと経験が年収に合ってないと思うなら、年収下げる転職ではなく、今の職場で期待値に到達するよう努力することではないの...
— みる太@外資ITの傭兵セールス (@milta_sales) March 9, 2023
なんでわざわざ年収下げてどうなるかわからない環境に行くの?
前職の年収がオファー金額の参照値になるので一回こんな転職しちゃうと年収下がり続けるリスク高い https://t.co/OVlngpxsL2
この説は綺麗事です。社会人生活を送ったことがない人間か、よほど恵まれていた人の戯言でしょう。 漫画や小説の読み過ぎで、現実が見えていません。「修行すればなんとかなる」という精神はドラゴンボールで終わりにするべきです。
ツイッターで「今の職場でもやり方次第でいくらでも経験が積める」などと言っている人間は、自分がポジショントークしていることに気付いていないので無視していいです。
まぁ、私は私のポジションでトークするので、、同様に偏りはあります。
少なくとも、JTC と呼ばれる日系大企業に就職してしまうと、自分の意志で経験は選べません。
選べたとしても、会社の大きなレールの中の内側を走るか外側を走るか程度の問題であり、道を選ぶことはできないのです。
もう少し具体的に話すと、新卒で大手 SIer に入ってしまうと、プロジェクトマネージャー以外の道はありません。
ソフトウェアエンジニアとして経験を積みたいと考えたとしても、そんな場所がないのです。 異動の希望は通りますが、異動先でもソフトウェアエンジニアとしての仕事ができるわけではありません。
入った会社と進みたいキャリアがミスマッチした状態だと、会社の中でどう頑張っても無駄です。 「同じ職場」では必要な経験を積めないケースがほとんどでしょう。
「じゃあ副業でやれば?」と言いたくなるかもしれません。 ですが、「本業の経験がある場合のみ」、副業での経験値はプラスされていきますが、本業もない副業だけの経験はおままごとに過ぎません。
個人開発でいくらアプリケーションを作ったからといって、面接ではほとんど評価されません。 鼻で笑ってくる面接官もいます(ウェルスナビの CTO を名乗る人物が鼻で笑ってきて実に不愉快でした)
「やったかどうか」というより、「業務経験」が大事なのです。 だから、どうしてもキャリアでミスマッチしている場合は、早めに職場を変えるのはアリです。
そして、その場合は大抵、年収は下がるでしょう。当たり前です。だって未経験なんだもの。
「今の経験を活かせます」とうまいこと言って、なるべく年収を下げない道はあるとは思いますが、大手 SIer からソフトウェアエンジニアとしてウェブ系の会社に転職する場合は、だいたい年収を下げることになるでしょう。
年収を下げずに新たな経験を積めるか?
年収を下げずに転職するには、今の職場の経験を活かさなければいけません。
「年収を下げる代わりに、良い経験を積める転職をする」みたいな話、限りなく嘘だなぁ、と私は思います。
— 安斎 響市 @転職デビル (@AnzaiKyo1) December 13, 2021
年収を下げずに、大きな経験値を得られる転職先を決めることができないのは、転職活動での「自分の売り方」が下手くそなだけ。それに、年収上げて転職した方が、確実に今より良い経験できます。
「これまでの経験を活かして、次の職場でも貢献できる」と相手を納得させる必要があります。
つまり、年収を上げて転職できるのは、「同じ職種」または「経験を直で活かせる」の場合だけです。
大手 SIer から年収を上げたいなら、プロジェクトマネージャーとして年収の高い会社に転職するとか、顧客折衝の経験を活かすような雰囲気を出して、外資 IT の営業に行くか、コンサルティング会社で IT をやるなどの選択肢があります。 逆にいえば、経験していない分野で年収を上げて転職はできないのです。
年収を下げて転職したら後悔する
- 年収を上げて転職するには経験を活かすしかない
- 異業種で経験が活かせないなら、年収を下げてしまう可能性が高い
以上でファイナルアンサーです。
年収を下げるなどありえない、という価値観の人もいれば、年収を下げてでも挑戦したい人もいるでしょう。
じゃあ、どんな道を選ぶのがいいか。 当然、自分次第です。答えは自分で見つけなさい。
ただ、1 つ間違いなくいえるのは、年収を下げると惨めになるってことです。
新たな業種で新たな経験は得られますが、惨めな気持ちは絶対に残ります。
同じ時間働いても、給料が少ないのですから。経験値が増えて、能力が高まっても年収は戻りません。やはり惨めです。
また、年収が低い会社は、その他諸々すべてしょぼい可能性が高いです。
福利厚生もなく、ネームバリューもない。結果、転職するときに「会社名」による錯覚効果も発揮できません。
一事が万事、低年収は全部ダメなのです。 低年収の会社で従業員として働くメリットはほぼありません。
「得られた経験で金を取り戻す算段」がない限りは、絶対に年収を下げるような転職はしてはいけません。
算段をつけたからといって、計画通りに人生が進まない点も気をつけましょう。
未経験だとしても、「アパレルからプログラマー」みたいな転職はありだと思います。年収が上がっていく可能性が高いからです。
「商社マンからベンチャー」みたいな転職は絶対に駄目です。
年収が下がるだけでメリットが全く無いからです。「面白そう」「自由そう」「裁量がありそう」などのイメージは幻です。 絶対に年収が高い大手企業は辞めないでください。ベンチャーは基本、働くメリットないです。