この記事は、SIer に勤める方が、転職して新たなキャリアを歩むための指針を提示するためにあります。
大手 SIer に務めていて、まだ 1 度も転職活動を経験したことがない人には役に立つ情報が散りばめられていると思います。
というのも、SIer 社員の転職活動のリアルを赤裸々に語った情報は世の中に少なく、「やってみないとわからない部分」がたくさんあります。
もちろん、私の事例が万人に当てはまるとは限りませんが、情報としては利用価値があるでしょう。
今現在、SIerで働いていて、転職を悩んでいる方がいれば、ぜひ参考にしてください。
大手 SIer からの転職は「どのキャリアを選ぶか」で難易度が異なる
大手 SIer からの転職先は複数あります。 私の転職活動の経験や、周りを見てみると、以下のようなケースのうちのどれかに当てはまります。 といっても「これだけ羅列したら当てはまって当然だろ」と思われるかもしれませんが、逆にメーカーや商社などに転職する人は見たことがないです。
- アクセンチュアなどの同じ SIer 業界への転職
- 外資 IT への転職
- 外資クラウドベンダーのソリューションエンジニアへの転職
- 外資コンサルへの転職
- ウェブ系エンジニアへの転職
- スタートアップへの転職
2010 年代半ばから後半にかけて、怒涛の勢いで日系大手 SIer からアクセンチュアに吸い込まれていきました。
「お前はアクセンチュアなんだけど、実は俺もアクセンチュアでした」みたいな勢いで、「転職します」といえば「あ、アクセンチュアに行ったな」という空気がありました。 部署の後輩もアクセンチュアに転職していきました。
NewsPicks の記事で以下のように書かれていたとおり、社員数を 3 倍にする勢いで採用していたようです。
総合系コンサル会社は、DX の普及に伴い、各社伸びているが、とりわけ、アクセンチュア・ジャパンの躍進が凄まじい。 従業員数は 6 年で 3 倍以上。2015 年は全世界のアクセンチュアの中で、6 位だったという売り上げも米国に次ぐ 2 位に躍進した。
2010 年代後半からコロナの時期では、外資 IT への転職が増えました。 とりわけ AWS、Google Cloud への転職が多かった印象です。英語をやっておけば 30 代前半で年収 1500 万を超えるってことです。
大手 SIer に入社するような人は、英語の読みやリスニングは普通にできる人が多いと思いますが、英会話には苦手意識がある人が多いです。
早めに英会話をやっておくと、年収面では間違いなく得するケースが多いです。これからの時代、英語は必須です。毎日何らかの形で触れましょう。
転職活動では、「転職先」の選択肢に加えて、「どのようなジョブで転職するか」も選ばなければいけません。
大手 SIer の中では誰もが「総合職」として扱われるため、「ロール」を意識することはないかもしれません。
ですが、基本的には転職活動では「社員にどのような専門性(ジョブ)を求めるか」が求人に明記されています。
プロジェクトマネージャーとして入社したのに営業をやらされるようなことはないですし、ソフトウェアエンジニアとして入社して、コンサルタントをやることもありません。
- プロジェクトマネージャーとして転職する
- プロダクトマネージャーとして転職する
- ソフトウェアエンジニアとして転職する
- プログラマーとして転職する
- ソリューションアーキテクトとして転職する
- コンサルタントとして転職する
などのように、「どんな役割で転職するか」を決めて、エントリーします。
大手 SIer から「プロジェクトマネージャー」として転職するのは簡単
大手 SIer の社員は「プロジェクトマネージャー」としての経験が期待されます。 どの会社の面接を受けても、基本的には「プロジェクトマネージャーをやってほしい」と言われるはずです。
プロジェクトマネージャーとして周りの社員を円滑に動かし、調整し、プロジェクトを進める力を評価してくれていることの裏返しですし、逆に言うと、プロジェクトマネージャー以外の専門性は持っていないと見られているということでもあります。
プロジェクトマネージャーとしてであれば、アクセンチュアは当然のこと、外資コンサルのマッキンゼー、BCG あたりを狙っていくのも良いと思います。
コンサルタントといえど、最近は IT と切っても切り離せないようで、IT の知見を持つ人材を探しているようです。
大手 SIer からコンサルタントへの転職はわかりやすいキャリアアップです。年収も大きく上がります。 残業は増えるかもしれません。
LINE やメルカリのような、メガベンチャーと呼ばれる大手 Web 系企業であったり、サイボウズや Sansan などの大きなウェブ系企業にだって、プロジェクトマネージャーとしてなら簡単に転職できます。
メガベンチャー側はソフトウェアエンジニアが楽しくてやっている人が多く、マネージャーポジションは不足しがちです。
しっかりとマネージャーをやってくれる人は喉から手が出るほど欲しいのです。
大手 SIer に勤務しているなら、好む、好まないに関わらず、マネジメントばかりしてきたはずです。 そんな苦労した経験が直に活かせるので、大手 SIer からのプロマネ転職は王道です。覇道ともいえます。
プロマネであれば、本当にどこにでも転職できます。どこからも歓迎されます。 プロジェクトマネージャーを極めていきたいなら、プロマネ専業で年収を上げる方向で転職活動して、成り上がっていくのは良い選択です。
「プロジェクト」が存在しない会社はありません。プロジェクトをマネジメントできる人はどこの会社でも必要です。
ちなみに大手SIerの方が転職するなら、最もおすすめなのがコンサル業界です。人
気が高まっているコンサル業界に転職すると、転職直後の平均年収アップ額は150万円です。
コンサル特化のエージェントMyVisionにご相談いただければ年収水準を下げず、転職できます。
MyVisionの特徴として、アクセンチュアやBIGなどの外資コンサル出身のエージェントが多数在籍しており、面接対策や書類の添削、年収交渉など外資コンサルへの転職支援が非常に充実しております。
大手 SIer からソリューションアーキテクトとして転職する
AWS や GCP のソリューションアーキテクトとしての転職も王道です。みんな年収上がってます。
ソリューションアーキテクトというとなんかカッコいい響きがありますが、大手企業に「AWS 使いませんか?こんな便利な機能がありますよ」と営業して、お客さんのクラウドに関する相談に乗る人です。
エバンジェリスト的な活動もします。SIer にいると、よく AWS の頭良さそうな人が「AWS の新機能」の説明に来ていたでしょう。あれがソリューションアーキテクトです。
AWS への応募はエージェント経由で行います。 いろんなエージェントが AWS の求人を取り扱っているので、紹介も多いと思います。
Google Cloud は自分で応募するか紹介してもらうしかないです。Google のイベントに参加したら、Google の人からメールが届いて、カジュアル面談みたいのが始まったこともありました(実話)
AWS の場合は、野村総合研究所時代の年収が約 1200 万円のときにリクルーターに紹介を受けたのですが、
「今の年収が 1200 万なら、AWS に転職すれば 1800 万円も狙える」
と言われました。
外資 IT のソリューションアーキテクトの水準がそのくらいなのでしょう。
30 代で SIer から AWS や Google Cloud に転職する場合は、年収 2000 万が見えるくらいの水準で転職できるようです。
アクセンチュアはそこまで高くなく、1000〜1500 万程度です。野村総合研究所や NTT データからわざわざ出て、厳しい環境であるアクセンチュアに行くならば、年収はかなり吹っかけても良いと思います。
大手 SIer からソフトウェアエンジニアとして転職するのは難しい
実はこの経路は想像以上に難しいです。年収を下げずに転職するのは厳しいでしょう。 面接でも相当なめられます。腹立たしいほどにです。
原因は、これまでの業務経験にあります。
「大手 SIer で、プロジェクトマネージャーとしてプロジェクトを管理していた」というなら、プロマネで転職してよ、と思われるでしょう。 なぜソフトウェアエンジニアとして転職したいのかをめちゃくちゃ面接で聞かれます。 なぜソフトウェアエンジニアとして働きたいのに、今になって転職活動を始めたの?というのも聞かれます。
相手を納得させるだけの理由がなければいけません。 相手を納得させるだけの理由があったとしても、相手が「欲しい」と思うような実績がないと内定が出ません。
この「実績」の部分が難しいのです。
というのも、SIer で仕事をする限り、どんなにプログラミングが好きでも、業務中にコードは書けません。 コードを書こうとしている人は、「サボっている暇な人」と思われるので、心理的なハードルが異常に高いです。
SIer でソフトウェアエンジニアのキャリアが積めると思うなよ
また、何かを作ろうとしても、性悪説に基づいて設計された意味もない「社内プロキシ」に常に邪魔されます。 SIerから転職すると「社内認証プロキシ」なんてものには出会わなくなります。
ひどいところは GitHub へのアクセスすら遮断しようとしている会社もあります。
現代のソフトウェア開発に詳しくない方が情シス、情報セキュリティ部などで仕事をするため、SIer の若手は本当に苦しんでいます。 SIer の 40 代は Excel しか使わないため、若手の苦しみは理解できません。
SIer では何かの決定権は 40 代、50 代しか持てないので、この苦しみはジジイになるまでなくなりません。 そしてジジイになる頃には自分も Excel, PowerPoint しか使わない「既得権益側」になるため、改善・改革のモチベーションはなくなります。
この負の連鎖を断ち切るには、断固たる意志で情シス部門の人間を全員クビにしなければならないのですが、日本は解雇規制が厳しすぎて、無能をクビにできません。 というより、無能と認識されていません。 SIerの情シスの責務は「社内の徹底的な安全」であり、快適な開発環境を整えたり、開発者体験を向上させることではないからです。
「SIer でソフトウェアエンジニアとしての経験を積む」のは茨の道なのです。
クラウド系の部署でクラウドエンジニアをやっていて、AWS や GCP に詳しいのであれば、SRE として年収 1000 万前後で転職もできます。 若手であれば、ポテンシャル採用ということで、ソフトウェアエンジニアとしても年収維持して転職できるかもしれません。
厳しいのは 30 代です。 年収もある程度上がって、「未経験での転職」は厳しく、即戦力が求められる年齢です。
そこで、SIer でレガシーシステムの保守・運用ばかりやっていて、GitHub も使ったことがない人が「ソフトウェアエンジニア」として転職するのは本当に難しいのです。
年収を下げて、ハードルが低い企業に転職する
上で述べてきた理由により、「SIer での年収 1000 万を維持したままソフトウェアエンジニアとして転職する」というのは、よほどプライベートで目を引く実績を残した人以外は難しいです。
年収を下げての転職は 99%の人に反対されると思いますが、30 代で目を引く実績なしで、ソフトウェアエンジニアとして転職するには年収を下げるしかないです。
かといって、目を引くほどの実績を作るためには SIer 勤務はハードゲームすぎるのです。
ハードゲーム、というのは、まず SIer の勤務自体がソフトウェアエンジニアとしてのキャリアと逆行しています。
技術に対しては否定的な空気があり、周りの誰もが新しい技術を知らず、業務中にはコードは書けないし、読めません。 下手すると、「動いているソースコード」がどこにあるかもわからないでしょう。
私の以前の職場では、COBOL のプロジェクトの場合、ソースコードは謎のファイルサーバに zip で管理されていました。 CVS(?)をカスタマイズした自社のソースコード管理システムで、顔も知らない担当者に「ソースコードをください」とお願いしてやっと、zip のソースコードを手に入れることができるようなイメージです。
じゃあプライベートでやればいいじゃん、と思われるかもしれませんが、SIer は残業が多く、22 時に帰宅するようだと、プライベートプロジェクトを進めるのは無理ゲーなのです。
「睡眠時間を削ってやれ!」とか言う馬鹿がいますが、睡眠時間を削って何かをするのは短期的にできても長期的には持ちません。 普段から時間を捻出するしかないのです。
そんな劣悪な環境で「実績を積んでから転職しよう」としても、転職市場には普段からコードを書いて、当たり前に GitHub でソースコードを管理して、毎日設計やら良いコードについて議論している連中がわんさか湧いてくるわけです。
普段からコードを書いて、ソフトウェアエンジニアをやっている人でも年収 1000 万なのに、未経験の SIer 勤務が「年収 1000 万維持」は道理に合わないでしょう。
というわけで、最速でソフトウェアエンジニアにキャリアチェンジしたいのであれば、年収ダウンを受け入れてさっさとソフトウェアエンジニアのロールで仕事をするしかないです。
ツイッターなどでは「年収を下げて転職するのは絶対にダメ」と言われますが、彼らは現実が何も見えていません。努力すれば何でも解決できると勘違いしています。
どうやって努力するかよりも、どこで努力するかが大事なんです。 SIer でどんなに上手く努力しても、ソフトウェアエンジニアにはなれません。
プロサッカー選手になるために毎日相撲の道場に通っているようなものです。 全然やってることが違うのです。
1 度年収を下げてから上げるのは簡単だがリスクは高い
ソフトウェアエンジニアとして仕事をするために年収を下げて転職したとします。
次の転職で年収を上げようとしたとき、基準となるのは「現職の年収」です。 なので、前職の年収 1000 万をアピールはできません。
「現職の年収」 + 200 万とか、そういうレベル感での転職になります。
とはいえ、一度ソフトウェアエンジニアとして経験を積むと、1 年でだいぶ年収は取り戻せます。
私の場合は SIer 1300 万 → 中小ウェブ企業 700 万 → 大きめのウェブ企業 1000 万 といった感じで、ソフトウェアエンジニアにジョブチェンジしてから 1 年で年収を上げて再転職できました。
ソフトウェアエンジニアの求人は多いので、引く手あまたといった感じです。超楽ちんでした。
1 度経験を積むと、転職は一気にイージーになります。 「経験者」として非常に楽に転職活動を進めることができます。
ただ、これはある意味では結果オーライです。
「低い年収が基準になる」のは非常にリスクが大きいです。 年収を下げる転職は避けられるなら避けるに越したことがないのは間違いないです。
「未経験分野への転職」というやむを得ない事情がある場合のみ、たった 1 度だけ、できるだけ若いうちにやるのが良いでしょう。
自分としては、40 代、50 代で SIer のつまらない仕事を続けても生きている意味がないと思っていたので、転職してよかったです。 ソフトウェアエンジニアとしての仕事は普通に楽しいです。
周りが技術に興味がある人ばかりなのは幸せなことです。仕事が楽しく、会社に行くのが苦ではない環境で頑張るのが良いと思います。
いずれにしても、初めての転職の場合はエージェントの活用は必須でしょう。 リンクを貼ると「あ、こいつも結局アフィリエイトやな」と思われるかもしれませんが、別のこのサイト経由でなくても、普通にエージェントは使ったほうがいいです。
2 社目以降で、転職に慣れてきたのであれば、年収交渉だったりオファー面談の時期の調整も一人でできますが、最初は訳がわからないので、エージェントに助けてもらわないと無理です。
エージェントとコンタクトを取ったからといって絶対に転職活動しなければならない、というわけではないので、軽い気持ちで活用しましょう。
いま自分はウェブ系に来て3年経ちますが、個人的にはよほどソフトウェア開発が好きでない限りは、 SIer の延長上にあるキャリアを積んだほうが良いと思います。 自分はソフトウェアエンジニアに夢があるので頑張れていますが、年収を上げてタワーマンションに住み、子供に十分な教育環境を整えて、豊かに暮らしていくのであれば、間違いなく初手で SIerから年収を上げていくキャリアを選択すべきです。
ちなみに自分がSIerから転職した頃は、ここまで急激に物価が上がるとは思っておらず、ちょっと予想外のダメージをくらっています笑。 いま、自分が SIer にいて、転職を考えるならば、年収を上げていく方のキャリアを選ぶ確率が高いです。年収を下げると物価高についていけないからね。
30代・SIerの方が年収を上げたいなら、最もおすすめなのがコンサル業界です。
コンサル転職エージェントのMyVisionが過去に支援したSIerの方の、転職直後の平均年収アップ額は150万円です。
コンサル業界の特徴として、昇給スピードが非常に高いこともあり、2~3年でさらにもう200~300万ほど年収が上がることも珍しくないので、年収を意識されているSEの方におすすめの業界です。
MyVisionの特徴として、アクセンチュアやBIGなどの外資コンサル出身のエージェントが多数在籍しており、面接対策や書類の添削、年収交渉など外資コンサルへの転職支援が非常に充実しております。