エンジニア転職のリアル

SIerの人は資格の勉強はやるが、技術書は読まない。会社員はそもそも勉強しない

2023/08/05に公開
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「SIer の社内では技術書の話をしない」というツイートが話題になっていた。

大正解。SIer に技術書を読む人間はいない。

こう書くと、一部の例外を取り上げて、「SIer でもオライリーの本を読み込んでいる人はいる」と反論する人はいるが、9 割は読まない。 「SIer にも技術書を読む人がいる」は正しいかもしれないが、「SIer で技術書を読む人はほぼいない」というのも正しい。

そもそも SIer でオライリーの本を読んだところで活用する場所がない。読む意味がない。

技術書は仕事で使う技術の予習に使うものであり、お勉強として読んでも正直ほとんど意味がない。 文字が滑っていくだけで、腹落ちもしない。本を読んだとしても、使わなければ 99%忘れるし、身にならない。

筋トレの本を読んでも、実際に筋トレしなければ筋肉はつかない。 筋トレ Youtuber の動画を何度見返しても、実際にベンチプレスをやってみなければ正しいフォームもわからないだろう。

「見る・読む」と「使う」の間には大きな乖離がある。

見て、読んだことも使わなければ何も身につかない。 自分で使っていなければ、「見て読んだ」ことを自信を持って語ることもできないだろう。

これは SIer に限らず、どこの現場でも同じである。 本を読んだら偉いわけでもない。

使わない知識には意味がない。

本を読んでから、自分で考えて、応用する過程がなければ、読んだ内容はほぼ無駄になる。

大して勉強していない奴に限って、「読んだ内容は自分の引き出しを作る」とか「本を読んで知識を入れておけば、何かの役に立つ」というが、自分で使ったことのない知識を語る人間はうざいだけで価値はない。

「物知り」は現場で役に立たないのだ。

SIer 社員は勉強しないわけではない

最大手の SIer にいて、私自身は技術書をたくさん買って、それなりの本を読んできた。ある意味では自分が SIer の例外であった。 国内では最も年収が高い SIer にいた。

皆、金がなかったわけではない。だが、技術書代は「もったいない」という人はそれなりにいた。

一方で、資格試験の勉強はちゃんとしている人が多かった。 年に 2 回、情報処理試験を受けて、高度情報処理試験をコンプリートしている人もいた。

情報処理試験をコンプリートしている人のスキルが高いわけではないが、勉強している人は多かったのがフェアな印象である。 証券アナリストや PMP のような、取得にけっこう手間がかかる資格を持っている人もたくさんいた。

逆にウェブ系で PMP の資格をわざわざ取得する人は少ないだろう。 自分は PM 系の資格に詳しくないので偉そうには語れないが、そもそも SIer で身につけるプロジェクトマネジメントの知識と、ウェブのアジャイルな開発のプロジェクトマネジメントは全く性質が異なる。

PMP や高度情報処理の知識が役に立ちそうな場面があまりない。 プロダクトオーナーはいるが、プロジェクトマネージャーはいなかったりする。

当然、Excel で進捗管理表みたいなのを更新する機会もない。管理資料もない。普通に Jira のボードとバックログを見ながら、2 週間のスプリントを回せばいい。

Excel がなくても開発は回る、というと SIer の人は信じられないだろうね。

Web の人は SIer の人よりは勉強するが、ケチも多い

かといって、Web の人がめちゃくちゃ勉強するかというと、そうでもない。 本は読まずに現場で学んでいく、という人もいる。

Web 系の人の方が学習意欲が高いわけでもない。ツイッターで目立つ人が Web 系の上澄みなだけで、大半の社会人は自学自習などしない。

ただ、Web 系の場合は知識量がアウトプットにダイレクトに影響してしまうので、勉強しない人は気まずくなりがちだ。

開発の当たり前の定石も知らず、変なコードを Pull Request で出してくる人がいたら、レビューで指摘されまくってしまう。 勉強しない人は、アンチパターンを踏みがちだ。

あとは、Web 系の会社で辞めずに仕事を続けているのであれば、やっぱり技術が好きな人が多い。 技術的な会話を嫌がらず、スキルアップに前向きな人が大半である。

この傾向は SIer とは明確に異なる。 SIer ではプログラミングができる人は尊敬されない。 ここで「プログラミング」と書くと、SIer に染まりきった人の印象を持たれるかもしれないが、設計を含めた技術領域全般の話である。

SIer では技術者は尊敬されない。 技術者は「単価が低い下請け」として、内心見下している人が本当に多い。

SE/PG という呼び分けは SIer 特有のものだが、PG は格下で、単価が低く、単純作業ばかりしていて、付加価値が低い奴らである、という価値観が嫌というほど染み込まれる。

SE の上に PM がいて、PM が一番すごくて付加価値が高い、という思考に染まっている。口に出さなくても、みんなが「PG」を見下している。 PM を頂点とする明確なピラミッド構造があるのだ。そのピラミッド構造は、SIer では「体制図」として表現される。

そんな環境なので、技術者として頑張ろうとするインセンティブはないし、オライリーの書籍の内容を語ることもない。 チャットで技術的なコンテンツが話題になることもないだろう。

ウェブ系に転職すると、Slack で普通に技術的な会話をしていることにまず驚くだろう。 技術的な会話が当たり前になると、特に気にも留めなくなるが、SIer の人からすると新鮮に移るはずだ。

技術が好きならウェブの会社で働いた方がいい。技術が好きな人が多数派だから。 SIer の社員の大半は技術には興味がない。その代わり、プロジェクトをスケジュール通りに完了させる方法を一生懸命考えている。

オライリーは読まないが、Excel をうまく使って、プロジェクト管理を効率化する方法であればみんな喜んで食いついてくれるだろう。 結局、勉強するしないというよりは、関心領域が異なっているだけなのかもしれない。


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