エンジニア転職のリアル

なぜつまらないSIerをさっさと辞めないのか

2023/01/10に公開
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私は毎日「本当に仕事がつまらない」と嘆きながらも 2011 年から 10 年間、SIer に勤めていた。

「こいつはなぜ、文句を言いながらも SIer を辞めなかったのか」と疑問に思う人もいるかもしれない。 本音を言おう。

給料が良かったからだ。

給料が安くて仕事がつまらなかったら即辞めるに決まってる。

当たり前だろう。逆に、どうしてわからないの?と問いたい。

ブスでデブで性格悪い女と付き合い続ける馬鹿がいるだろうか? 美人でも性格が悪いから悩ましいというのに。

「現職を続ける・続けない」の判断の軸は人によって異なるだろうが、私にとっては概ね以下のようなものだった。

  • 年収
  • ネームバリュー
  • 仕事の楽しさ
  • スキルが身につくか
  • 業務中のストレス

これらの要素を天秤にかけて、メリットが大きければ現職に残り、デメリットが大きければ転職活動をする。

それぞれの要素の重要性は年齢によっても異なってくる。

20 代の私にとっては年収とネームバリューは実に重要なものであった。 マッチングアプリで出会う女の子の反応が良くなるからだ。

進路に迷っている大学生にとっては、こういう情報こそ重要なんじゃないか?

良識的な大人は真実を言わないが、会社名とモテには明確な相関がある。

大企業で年収が高いほうが東京ではモテやすい。見た目がイマイチでも、婚活でのウケは良い。

会社でのスキルアップよりも、"IT'S A MATCH" が重要な若者だっているはずだ。 転職市場で無双するよりも、ペアーズで無双したい人だっているはずだ。

そういう人は普通にネームバリューのある会社に行った方がいい。

ネームバリューによる「バフ」は大企業の隠れたボーナスとも言えるだろう。 会社のネームバリューは我々の魅力に下駄を履かせてくれる。怪しげな人間に信用を与えてくれる。

そして会社のネームバリューとは、年収と知名度、そして学生時代に認知されていた就活難易度に比例するのが現実だ。

すごい会社のネームバリューが高いのではない。すごいと思われている会社にネームバリューがあるのだ。

そういう意味では、年収の高いが無名の外資 IT よりもウェブでは不評の富士通の方がモテる。 富士通の 4GB のパソコンのファンを回しながら、Tinder を横スワイプしていればいい。

SIer を辞めない理由

SIer を辞めなかった理由はシンプルである。

  • 辞めても年収が下がる可能性が高い
  • 年収が上がる方のコンサル系への転職は今よりさらに激務になりそう
  • コンサル系に転職しても楽しくないし、何より怖い
  • なんだかんだでネームバリューを捨てることに抵抗があった
  • AWS などのソリューションアーキテクトに受かればいいが、そう簡単には受からないし、頑張るほどの興味がない

今振り返ると、私は間違いなく深層心理上ではではこんなことを思っていたはずだが、不思議なことに、自分の本音に気付いていなかった。

当時は本気で、

「旧態依然とした組織の中でも、前向きに手を上げて、チャレンジを続けていけば道は拓ける。なんだって自分次第なんだ」

と考えていた(つもり)だったのだ。

ネームバリューなどいらないし、好きなことを仕事にしたい。 会社には恩があるし、幸いチームは良い人ばかりだから、チャレンジしてみたい、などと考えていた。

綺麗事が本心を覆い隠していた。

厳しい現実から目を背けていた。組織を変えることなどできるわけがないのに。

私達は皆、本音ではもっと打算的で、利己的である。

何かしらのメリット・デメリットを天秤にかけながら都度、判断している。

私は年収とネームバリューを失うのが怖かった。

頑張ろうとしていた当時だって、仮にマッキンゼーや Google からオファーが出ていたら、「旧態依然とした組織を変える」など一ミリも考えることなく、即日退職届を出していたことだろう。

ドヤ顔で「こんなすごい会社に転職するんだぞ」とでも言いたげに、退職報告をしていたに違いない。

ネームバリューは重要か?

私は意識が高く、ビジネス書をよく読み、その反面自分を見失っていた。

ネームバリューは大事だ。失って初めて気付くものでもある。

総合商社を辞めてベンチャーに行く人が増えているという。 辞めない方が良い。

SIer を辞めてスタートアップに行く人が増えているという。 辞めない方が良い。

信用が下がり、タワーマンションの審査に通らなくなり、人にドヤ顔で会社名を言えなくなる点を理解しておいたほうがいい。

「ドヤ顔で語る」というと、「ドヤ顔なんてしたことねえよ」と反論したくなる人はたくさんいるだろうが、会社名に自信が持てなくなると、恥ずかしい気持ちが湧いてくるのだ。

転職して初めて気付いたことだった。 年収が低く、ネームバリューのない会社で働くと、プライドと自信が徐々に失われていくのだった。

なので、確固たる自己と強い意志、そして揺るぎない自信がない人は、わざわざスタートアップに行く必要はない。

自分のアイデンティティが会社に依存している人間がスタートアップに行くと、ダメージは待遇面だけではなく、精神的にもダメージを受けることだろう。

「他人によく見られたい」という欲求がある人は就職先の条件にネームバリューも含めるべきだ。

逆に「マジで好きなことをやりたい」「(綺麗事じゃなく)他人は本当にどうでもいい」というタイプの人は、さっさと大企業を捨てて起業するか、スタートアップで楽しく働くのがいいだろう。

ちなみにネームバリューへの依存心のようなものは、「一度手に入れた人」の方が発生しやすい。 最初から無名のスタートアップにいる人よりも、大企業に無意識下で自尊心を支えられていた人の方が、ネームバリュー症候群に陥りやすいといえよう。

己の価値観と向き合え

転職活動とは、自分自身の本音に向き合う機会でもある。 私はここに、恥ずかしい己の内面を書き記した。

読んだ方の多くは「馬鹿やコイツwww」「李徴 乙www」などと笑いたくなるだろう。 ツイッターなどには記事を載せていないし、RSS も搭載していないので不特定多数に読まれる確率は低いとは思うが、万が一目についたら笑われるはずだ。

しかし、誰も書けない恥ずかしい内容にこそ、価値がある。 「他人に笑われるような価値観」が自分の本音な可能性もある。目を背けないでほしい。

この記事を読んだ人は、自分が「本当は」何を大事にしていた人間なのか、今一度振り返ってみてほしい。

世の中に溢れる綺麗事や意識高いビジネス書、SNS の影響で、私達は想像以上に「他人の意見」に支配されている。

自分は自分なのだ。 本音に向き合うと、決して美しくない価値観を大事にしている自分に気付くかもしれない。

綺麗じゃなくてもいい。キモくてもいい。

目立ちたい! すごいって言われたい! モテたい! 金持ちになりたい! 尊敬されたい! 自由になりたい! かっこいいって言われたい! 俺だって人気者になりたい!

みたいな、本心があれば、自覚しておくといい。できるできないは別として。

本心を見つめずに綺麗事に支配されたまま進路を選ぶと、後々に「価値観とのずれ」が発生し、戸惑う可能性がある。

本音・本心をこっそりと、誰にもバレないように見つめ直してほしい。 意外と SNS の「すごそうな人」の発言に影響されていた自分に気付くはずだ。


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