「社長がエンジニア出身」と強調される求人がたまにあります。
昔は Gree なども「社長がエンジニア出身」と強調されてましたね。
SIer にいた頃、人権のないメモリ 4GB のパソコンを支給されていたので、
「偉い人が技術を知っていたらこんなアホなパソコンは配られないはずだ」
「技術を知らないやつが権力を握るとろくなことにならない。上に立つ者は皆、技術を知るべきだろう」
と思っていました。なので、「社長がエンジニア出身」に強い魅力を感じていました。
「社長がエンジニア出身なら、エンジニアの気持ちはわかってくれるし、大手 SIer のようなくだらない意思決定はしないに違いない」と思っていました。
結論、全然そんなことはないです。
「社長がエンジニア出身」はむしろ逆効果に働くこともあります。
「代表が元エンジニアなので、エンジニアの気持ちがわかり、大事にします!」
— みなか™ (@orgmrm) August 18, 2022
というのは、大嘘だと思っておいたほうがいい。あくまで「元」エンジニアであって、今は「企業経営者」なので、立場が全く異なる。従業員エンジニアが会社の売上に支障をきたすことをしても、優しくしてくれるわけない
エンジニア出身の社長が技術に口出しすると面倒くさくなる
社長が元々エンジニアだったとしても、会社が大きくなると、コードを書くことはなくなります。
上場した企業で、社長が未だに現役でコードを書いている、なんてことはありません。
社長の仕事はコーディングではなく経営です。 現場を離れて経営に専念しているため、多くの「エンジニア出身」の社長は現代の技術について全くわからないほど、知識のアップデートはできていません。
そんな風に、長い間現場から離れているにもかかわらず、「自分がエンジニア出身」ということで、技術がわかったつもりになっているケースがあります。
アーキテクチャ、デザイン、細かな仕様、マネジメント手法など、各チームに任せればいいものにいちいち口出しをしてくる社長もいるのです。
エンジニアがあるプロジェクトの見積もりを出したときに、
「その見積もりはおかしい。俺だったらもっと少ない工数で完了できるぞぉ!」
と、自分がエンジニアだった頃の思い出をベースにして、現在のエンジニアの意思決定に介入してきます。
10 年前に素人コードを書いていた人が、いつまでも現役の技術者のつもりで意思決定に口出してくるのは、端的にいって迷惑です。
社長がエンジニア出身で、エンジニアの環境は整えるものの、現在の技術のことはわからないから CTO に任せる、とかならいいのですが、謎に技術に自信を持っている社長はエンジニアの足を引っ張る障害になります。
また、自分の時代の技術しか知らないので、逆に現代のモダンフレームワークに対して否定的になったりもします。
「jQuery で十分やないか」
みたいなことを平気で言う人もいます。
「社長がエンジニア」はアピールポイントでも何でもありません。
労働者にとっては別にメリットはありません。
それよりも、「エンジニアフレンドリー」な組織を選びましょう。 エンジニアフレンドリーかどうかには、CEO がエンジニア出身かどうかは関係ありません。
エンジニアに裁量を持たせて、パフォーマンスを発揮しやすい環境を整えることができる社長の下で働きましょう。
元エンジニア代表に期待すべきことは「気持ちの理解」なんかじゃなくて、会社の売上に貢献するベクトルとエンジニアが向きたい方向との内積が最大化するようにアサインしてくれることだと思ってる
— D-Hori (Web技術アカ) (@d_hori_web) August 19, 2022
技術に自信を持っている社長は、ついつい偉そうに現役のエンジニアに自分の意見を押し通しがちです。
人に任せられない器の人間の下には、まともな人間は残りません。
大事なのは社長がエンジニア出身かどうかではなく、エンジニアフレンドリーか
社長がエンジニア出身が逆効果になるパターンもあることは覚えておいてください。
元エンジニアのセルゲイ・ブリンやマークザッカーバーグ、ビル・ゲイツと中小企業の元技術屋の社長では器が違いすぎます。
いちいち現場に介入してくる社長がいる会社に就職してはいけません。
大事なのはエンジニア出身かどうかではなく、エンジニアにフレンドリーかどうかです。
- 仕事で使うマシンを選ぶことができる
- 生産性が上がる椅子や机、ディスプレイを使える
- 新技術の採用やライブラリのバージョンアップに寛容である
- 技術的負債に対して理解がある
- ウォーターフォール的な締切を求めない
- 細々とした報連相を求めない
エンジニア以外の普通の社会人の方が見ると「報連相は当たり前だろ」と思うかもしれません。 たしかに早めの報告は大事です。問題が発生したときは特に。
ですが、何でもないのにいちいち報告を求めるマイクロマネジメント系の会社だと、どうしても報告が重くなります。
マイクロマネジメントする人間に対する報告資料は厚くなるのが定石だからです。
報告資料の作成は何のスキルアップにもならないし、専門性の獲得にもつながりません。
専門職であるエンジニアにやらせる仕事ではないです。
無駄な仕事があるかないかは、社長が元エンジニアかどうかには関係ありません。社長の性格次第です。
ワンマン経営社長のベンチャー企業に転職すると、大企業より仕事がつまらなくなる
エンジニアに裁量があるのが重要
繰り返しになりますが、重要なのは、エンジニアに裁量があることです。
何をするにも上司に報告しなければならない会社は息苦しいし、つまらないのです。
自由には責任が伴いますが、自由もないのに責任を求める会社もあります。
エンジニアが裁量を持って働ける会社を選びましょう。
「小さい会社だと裁量がある」という認識は誤りです。
小さくても裁量がない会社もあります。
見極めは難しいですが、カジュアル面談や面接で相手をよく観察して、現場の人間に裁量がありそうかなさそうかを敏感に嗅ぎ分けましょう。
大企業からベンチャーに転職するメリットとデメリット、やりがいを経験者が語る
身も蓋もない結論を言うと、その会社が良い会社か悪い会社かなんて入ってみないとわからないんだから、年収が高くてブランド力がある会社に入るのが一番です。
年収は裏切りません。
年収を下げてベンチャーに期待して入ったのに、ワンマン社長に振り回されて辞める...なんてケースが本当にたくさんあります。
年収が低いと嫌な仕事を我慢できません。続けられません。
勤め人である以上、変な上司や変な社長に当たるリスクはあります。
それでも我慢できるように、できる限り年収が高い会社に入りましょう。