年収 2000 万のサカモト氏が「SIer の良いところを知りたい」とツイートしていた。
SIerに関するポジティブな意見もずっと待っているんだけど一向に来ない。私はずっとお待ちしています。就職予備校として素晴らしいとかそのような話ではなく、外資とか普通に行けるけど、一生ここにいたい的な意見が聞きたい。
— サカモト@エンジニアキャリア論 (@sakamoto_582) January 31, 2023
よかろう。私が SIer の魅力を嫌というほど叩き込んでやる。
サカモトよ。「君に届け」と願いながら、記事を書く。
はてなブックマーク全盛期の 10 年前からネットでは馬鹿にされがち、避けられがちな SIer だが、魅力もあるのだ。
転勤しなくてもいい
SIer の大きな魅力の 1 つが、転勤がない点だ。
「IT 業界だと基本、転勤なんてないだろ」とツッコみたくなる人は頭が固い。固くするのは下半身だけにしておけ。
メガベンチャーや外資 IT と比べるから負けるのだ。
日立を見ろ。日本生命を見ろ。三菱 UFJ 銀行を見ろ。東京電力を見ろ。ソフトバンクを見ろ。
家族がいても、彼女がいても、お構いなしに転勤させられる。若くて遊びたい盛りに田舎に飛ばされる。 住む場所ですら自分で決められないのだ。
それに比べて、SIer 社員のなんと幸せなことか。勤務地は基本、関東圏内で変わらない。 東京に住んでおけば、通勤に困ることもない。
「意味不明な転勤がない」という特徴は、日系大企業の中では喜ばしいものなのだ。
SIer 社員は将軍になれる
SIer は自分が戦わなくてもいい。
黒い画面で黙々とコマンドを打ち込むソフトウェアエンジニアを「使う」立場にいるのが SIer 社員である。
無論、キングダムに例えると千人将レベルの小物ではあるが、将軍は将軍だ。
自分自身が強くなくても、強くならなくても、優秀な手駒を揃えれば、自分の手柄にできるのだ。
私が昔働いていた最大手 SIer では、「優秀な協力会社メンバーを確保して離さない」のがとても重要だった。
SIer で扱うレガシーなシステムには、そのシステムを 15 年以上見てきた超ベテランの協力会社の社員がいる。
プロパー社員よりもずっとシステムに詳しく、そして実装が早い。
そういうキーマンとなるパートナーを自分の配下に置き、仕事を振りまくることで、その成果を自分の物にできるのだ。
言い方に悪意はあれど、大手 SIer 社員はほぼ全員、優秀な協力会社におんぶに抱っこ状態になっている。
優秀な外部委託を手駒にして成果を生み出していけば、その成果を持って評価につなげることができる。
ボーナスにも多少色を付けてもらえる。
残業は多いが、将軍として配下の駒を動かしゲームを攻略する面白みはある...はずだ。 いや、ないか。まぁいい。
大手 SIer は将棋が好きな人には向いている。どの駒を動かせばプロジェクトを攻略できるか、「体制図」を作り、駒を動かしていくのが SIer の仕事だ。 気分だけは藤井聡太になれる。
あと、パズルが好きな人にとっても、SIer は魅力的だ。
毎日、工数パズルに没頭できる。
勉強しなくてもコミュ力で仕事がこなせる
SIer ではスキルよりコミュ力が重要である。
口八町で人を気持ちよく動かすことができれば、プログラミングなんてできなくても仕事が回る。
一人でなにか作業をするよりも、他の部署・他のチームの誰かに仕事を頼んで成果を受け取るのが SIer 社員の仕事である。
つまり、コミュ力があれば IT 知識が乏しくても、なんとか仕事は回せるのだ。
ひたすら学び続け、自ら手を動かしてスキルアップし続けなければならない外資 IT やメガベンチャーの SWE に比べて、SIer はなんと気楽なのだろう。
新しい技術なんて学ばなくていい。 それよりも、新しい技術を知っている人とコミュニケーションを取って、その人に気持ちよく仕事をしてもらうのが大事なのだ。
最新の技術は誰かが学んでくれる。俺たちはそれを評価できればいい。たとえ中身がわからなくても、だ。
ちなみに「SIer の人間が全く勉強しない」というと、語弊がある。
SIer 社員はみんな、情報処理試験の勉強は一生懸命やっている。
部署の中には高度情報処理試験を全部コンプリートする猛者も数人いたくらいだ。きっと暇だったんだろう。
また、日経新聞もよく読んでいる。 体感では、ウェブ系で日経新聞を読んでいるのが 5%もいない。
SIer 社員の半分以上は日経新聞を読んでいるはずだ。
日経新聞のエンジニアは年収が高い!最終面接に行く方法と対策、コーディングテストの攻略について
アウトプットよりも稼働時間(頑張り)で評価してもらえる
SIer では成果が曖昧である。
ウェブ系のソフトウェアエンジニアは書いたコードで実力がバレてしまうし、タスクの消化速度で成果が可視化される(もちろん個人よりもチーム全体の成果が大事なのだが)
SIer の社員はコードは書かないし、Pull Request も投げない。
アウトプットは Excel のガントチャートの更新や議事録、担当したプロジェクトの進捗の報告となるので、「成果主義」といってもアウトプットは評価しようがない。
誰がやってもあまり差がつかず、「業務をよく知っていてソフトスキルが高い人」が認められやすい。
そして何より、具体的な何かを生み出すよりも、「遅くまで頑張って残業する」みたいな「努力」が評価されるのだ。
なんて温かい会社なんだろう。会社で目を開けて眠っていたって、遅くまで残っていれば評価してくれるのだから。
だから、頑張れる人にとって、SIer は良い。ただ残業するだけで、絶対に悪い評価にはならない。
「あいつは頑張ってるから」と上司も応援してくれる。
その代わり、定時で帰ったり、在宅勤務ばかり人には周りは冷たいし、成果っぽいものを出したとしても、残業しない人はあまり評価されない可能性もあるので注意が必要だ。
高級マンション・住宅ローンの審査が通る
大手 SIer の最大のメリットといえよう。
雇用が安定していて、信用があるので、ローンの審査が通るのだ。高級マンションの審査も背伸びしない限りはまず落ちない。
この「信用」こそが、昭和の時代から日系大企業が積み重ねてきた資産である。
ツイッターで幅を利かせる外資 IT 勢よ、お前達にこの「信用」はあるか?
日本に根ざし、日本の文化を育み、日本の発展に寄与し、多くの日本国民から認知されるに至った J・T・C。
我こそが天下の日系大企業である。
日本に住む限り、会社員の「信用」を審査するのも日本人だ。
いつレイオフされるかわからない外資 IT の馬の骨よりも純然たる JTC の SIer 民を信用するのは必然である。
初対面の人に信用してもらえる
みんなが知ってる会社で働いていると、初対面で信用されやすい。
肌感覚ではあるが、年収 2500 万の Indeed に勤務するソフトウェアエンジニアよりも、富士通の 4GB のパソコンで作業している末端 SE の方が信用されやすい。
婚活などでもウケが良いはずだ。
ゴールドマン・サックスや Google のような誰でも知ってる外資系企業ならまだしも、一般人が知らない外資 IT は基本、胡散臭いとされる。
胡散臭さと無縁なのが大手 SIer である。信頼の大手 SIer だ。
年功序列で毎年給料が上がっていく
30 代半ばまでは勝手に給料が上がっていいく。 入社さえすればクビにもならず、勝手に年収 1000 万まで到達する。
これを魅力と言わずなんと言えよう。
ツイッターでは転職して年収を上げるジョブホッピングが奨励されがちだが、転職活動は基本的に面倒くさい。 年収は上がるが、けっこう辛いことも多いのだ。
時間も手間もかかる。
その点、大手 SIer は良い。転職活動しなくても、30 代前半までは毎年 100 万円くらいは年収が上がっていく。
大した成果がなくても勝手に年収が上がるのは本当にありがたいことだった。
自分が何かを成し遂げた実感もなく、自動的に年収が 1000 万を超えるのだ。
SIer、良いと思わないか?
偉そうに人を詰めることができる
SIer 社員の中には自分が偉いと勘違いしている人がけっこういる。
「俺たちは協力会社を使う立場にあるんだ。なんてったって、俺たちの単価は 200 万円以上。彼らの 2 倍以上仕事ができて当たり前なんだ」と、ガバガバの理屈で「俺はすごいんだぞう」と主張するマネージャーもいた。
募集したらSIerの良いところ提供して頂きました! pic.twitter.com/T3dOZmE7aL
— サカモト@エンジニアキャリア論 (@sakamoto_582) January 31, 2023
協力会社の開発者に偉そうにして、「詰める」人もいた。
「どういうことですか?」 「なんでできないんですか?」 「いつできるんですか?」 「報告してください」 「これはダメですよ」
などと、自分では一切手を動かさずに評価する。
常にレビュワーの立場で仕事をするので、偉くなった気分になれるのだ。
これで自己肯定感が高まる人間はどこか欠陥を抱えていると言わざるを得ないが、下請けにいるよりはストレスが溜まりづらいかもしれない。
無論、このように偉そうにしている大手 SIer プロパー社員も、上司には怒られ、詰められている。
殺し合いの螺旋を生きるのは、SIer 社員の宿命なのだ。
コンサルや外資ソリューションエンジニアに転職できる
これはサカモト氏のツイートの通り、意識高いやつはコンサルか外資プリセールスに転職してる。
大手 SIer の入れば敗者復活戦に挑むことができるのだ。
なるほど。これがSIerを目指す学生の実態なのか、、、一部の人達からは外資コンサルへ行く為の予備校になってしまってる説。 pic.twitter.com/Sv77jyM6Uy
— サカモト@エンジニアキャリア論 (@sakamoto_582) January 31, 2023
プライベートは充実しない
私が思う良いところは、定年まで雇用がある程度保証されているので安定思考な方、自己研鑽してキャリアアップしたい人ではなくプライベートを充実させたい方におすすめだと思ってます。
— サカモト@エンジニアキャリア論 (@sakamoto_582) January 31, 2023
SIer は残業が多く、そして「夜間コール」と呼ばれるオンコール対応があるので、プライベートなんて充実しない。
プライベートを充実させたいなら SIer に入るな。
ウェブ系企業というか、ソフトウェアエンジニア職は基本的に、ほとんど残業しないし、誰かが早く帰っても誰も気にしない。
リモート勤務にとやかく言われることもない。自宅から Pull Request を出せばいい。プライベートを充実させるならウェブ系の方が絶対にいい。