エンジニア転職のリアル

SIerとWeb系で仕事はまるで違う?両方経験したエンジニアが解説する

2022/06/18に公開
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大手 SIer とウェブ系の両方の企業を経験してきました。

新卒で大手 SIer に就職し、10 年目にしてウェブ系自社開発企業に転職しました。

そんな筆者から見た、SIer とウェブ系の違いを解説します。

SIer の社員はあくまで「管理者」

ウェブ系は「エンジニア」として働いている点が大きく違います。

SIer ではコードを書いたらサボっていると思われる

SIer と ウェブ系ではコードに関するスタンスは全く違います。

自社開発の企業では基本的に、自分で作ってなんぼです。社員が手を動かして、物を作る文化があります。

SIer ではコードを書くのはあくまで趣味であり、暇で仕事がない人がやる単純作業です。

コーディングは「協力会社」と呼ばれる外部ベンダーに投げる作業です。

「PG」と呼ばれるプログラマーの管理こそが「付加価値の高い仕事」とされています。

自社開発・内製・ウェブ系と言われる会社では、コードを書いて当たり前で、コードを生産して価値を生み出しています。

無論、コードを書くのをサボっているとみなす風潮は全くありません。

解決したい問題があれば自分でコードを書いて、 Pull Request を作ります。

自分で直し、改善していくのが正義です。

SIer の場合は、何か問題を見つけたとしても、自分で手を動かして直すとものすごく後ろめたい気持ちになります。

「本当にモノを作っていいの?自分が作ったものは誰がレビューしてくれるの?社員はコードなんて読まないし、腫れ物扱いされてしまう...」

という気持ちがつきまといます。

SIer はあくまでも、どこまでも管理者なのです。コードを書いてはいけません。

SIer は管理・調整・政治、自社開発はスキルとチームワークで仕事を進める

業務中のチャットでのやり取りの中身も全く違います。

SIer の仕事は管理と報告、ステークホルダーの調整が主になります。

常に政治的です。何か仕事を進めるときは、同じ会社だったとしてもいちいち資料を作り、別の部署の人に懇切丁寧に説明してお願いしなければ何もできません。

インフラチームに頼まないと、サーバー上にディレクトリ 1 つも作れません。

自社開発の会社だと、何を作るか、どう作るかが関心の中心です。

必然的に、自社開発の会社では技術的な話題が多くなります。ここのコードの書き方はどうか、どうやってリファクタリングするか、などを毎日話します。

チャット上では仕様に関する Q&A だったり、実装についての相談など主となります。

SIer のチャットは「進捗報告」がメインですが、そういうのはウェブの世界では見たことがありません。

SIer とウェブ系の管理ツールの違い

SIer では Excel と PowerPoint がメインツールです。 すべての管理を Excel で行います。

自社開発...というかモダンな環境だと、Jira や Notion を使います。

そのとき主流となっている SaaS を使って仕事を進めることで、生産性を高めているのです。

給与の支払いだって、SIer は古臭い自社のシステムを使っていますが、ウェブではどこも SmartHR を使います。

ちなみにコミュニケーションツールですが、某大手 SIer の場合は 2020 年頃までメールばかりでした。

2021 年以降、 Mattermost という Slack のクローンをオンプレサーバー環境に立ててチャットする文化が徐々に広まっていました。

Slack は導入できません。 「外部サービスだとセキュリティーがぁ」などといって、とにかくオンプレ以外の環境を許さない社内セキュリティ部の人がいるからです。

この社内セキュリティ部こそが、SIer の生産性を落とす元凶です。

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大手 SIer の会議の時間は長すぎる

SIer は一般社員から管理職、プロジェクトマネージャーに至るまで、一日 5 時間以上は必ず会議が入ります。 会議が終わってから自分の作業を始めるため、必然的に残業時間は多くなります。

残業時間は平均で月に 45 時間。最低 30 時間。 残業時間が 30 時間以下だとすごくサボっている人扱いされます。

18 時に会社を出ると「早帰り」扱いされるのが SIer です。

自社開発の企業では会議の時間は比較的少なめです。 多くて 1 日 2 時間といったところでしょうか。

ただ、自社開発の会社でも管理職は会議が多いです。 内製を捨てて外部委託に走っている会社も会議が多くなります。

結論、「管理」がメイン業務になっている人は会議が多いのです。

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SIer とウェブの使っている技術の違い

SIer にもピンきりですが、古いシステムの保守・運用が最底辺です。

最底辺が COBOL。COBOL をリプレイスして古いバージョンの Java や.NET を使っているくらいです。

私がいた頃は、Git を知らない社員が大半でした。SVN ですら知らない人もいました。

GitHub でソースコードを管理しているチームはありません。 オンプレに立てた GitLab を使うチームが最先端ですが、CI/CD の仕組みはありません。

インフラはクラウドネイティブとは言い難く、リフトアンドシフトよろしく、オンプレのサーバーを自社の EC2 もどきのクラウドサーバーに載せ替えるのが精一杯な感じでした。

自社開発企業ではクラウドがベースで、クラウドネイティブな構成でインフラを作っているところが多いです。

GCP、AWS が主で、Azure を使っている会社はほとんどありません。

プログラミング言語は、SIer は COBOL、Java。 自社開発は Ruby on Rails、Go 言語、Kotlin、Node.js が多いです。

フロントエンドは SIer は AngularJS(とても古いやつ)か jQuery が多いです。 自社開発だと React か Vue を使っています。

SIer に関しては技術云々以前のレベルで、モダンもクソもなく、化石を頑張って保守しているのが現状です。

モダンな技術を扱う部署もありますが、全体の 5%以下なので、SIer にいる時点で技術トレンドからは 10〜20 年は遅れていると考えていて間違いないです。

さりとて、SIer の中にいる人は、周りもみんな技術を知らない人ばかりなので、世間から見て時代遅れになっていることにも気付けないのですが...。

給料・福利厚生

最近は自社開発の会社も上がってきています。年収 1000 万近くのオファーも出ます。 ですが、大手 SIer と比べると、やはり大手 SIer の方が給料は良いです。

私は大手 SIer から自社開発を謳う中小企業に転職したのですが、ボーナスの額が 4 分の 1 になりました。 福利厚生もなく、昇給も年に 5,000 円程度です。

それでいて、会社の役員は「市場平均くらいの年収水準である。不満を感じる理由がわからない」などと言ってました。

100 人しかいない会社のうち、10 人が役員だったら平均は上がるのは当然と感じたのですが、中央値は教えてもらえませんでした。

「仕事が楽しくてスキルが身につく会社がいい」と気合を入れて転職するものですが、年収が高い会社に転職しないと、確実にやる気をそがれます。

事あるごとに、「こんなにケチなのか」と落胆することになります。また、嫌なことが見つかったときに我慢するインセンティブがないので、すぐに辞めたくなります。

年収は正義なのです。

あと、年収が低くて小さな会社には、高学歴の人はほとんどいません。聞いたことのない大学の人ばかりになります。

転職するならメガベンチャーを目指すのが良いでしょう。

自社開発の中小企業はクソなので、転職するなら踏み台にするつもりで転職しましょう。

給料が安いからといって、仕事が楽になるわけではありません。

自社開発でもベンダーコントロール中心の会社もある

自社開発を謳う会社であっても、開発をベンダーに投げている会社もあります。

そういう会社の仕事は SIer に近い雰囲気があります。

「SIer かウェブか」というより、「内製か外注か」で分類した方が実情を正確に反映していると言えるでしょう。

転職活動の際は、「開発は内製ですか?ベンダーに委託していますか?」と必ず聞いておいた方がいいです。

外部委託にシフトしている会社になると、業務は基本的に管理が中心となります。

仕事の内容も管理と報告、承認資料の作成と工数管理が主になってきます。

稀にですが、SIer の中にも内製を頑張っている部署もあります。確率は非常に低いですが。

キャリア戦略としては、SIer は避けつつ、ソフトウェアエンジニアとしてキャリアを積めるメガベンチャーを積極的に狙っていき、最終的には外資 IT で年収 2000 万超えを目指すのが良いでしょう。


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