野村総合研究所の平均年収は 1232 万円です。有価証券報告書で公表している値なので、正しい数字です。
現在、一般職はほぼ存在しておらず、年収に与える影響はないので、「普通に NRI に入社した社員の平均」と考えて差し支えありません。
有価証券報告書では平均年齢が 40.6 歳になっていますが、1232 万円に到達するのが 40 歳という意味ではありません。
30 歳で 1000 万円を超えて、34 歳あたりで 1200 万円は超えます。
社員の多くは持株会に入っていて、持株会に入っている社員は「信託型従業員持株インセンティブ・プラン」、通称 E-shipのお金が 2 年おきに振り込まれます。
期間内に株価が上がっている場合、「持株の購入数 × 上昇分」のお金が振り込まれるため、200 万以上も年収が跳ね上がる人もいます。NRI の株価が上がっているという前提ですが。
その他にも、めったに無いですが、50 周年の記念にお金を振り込んでくれたり、色々とお金払いが良く、住宅ローンが確実に通るなどのメリットもあります。
さて、NRI はなぜ年収が高いのか?ネットで語られている内容があまりしっくり来ないので、私なりに説明してみます。
ちなみにウェブの記事にある「営業がいない」というのは嘘です。普通に営業担当はいます。 人月単価が高いのは事実ですが、具体的な数字は書けません。
「なぜ人月単価が高くてもお客さんはお金を払ってくれるのか?」と深堀りするのが大事です。
また、「年収が高いのは利益率が高いから」と書かれていますが、人件費はコストなので、年収を上げると利益率は下がるはずです。
従業員に高い報酬を支払っても高い利益率を維持できているのはなぜか、を考えるのが重要です。
野村総合研究所の年収のリアル | 30 歳で年収 1000 万は本当か?
業務システムを合法的に独占してるから
顧客が高い保守費用や利用料、人月単価を支払ってでも NRI の製品を使うのは、替えがきかないからです。
NRI の証券系のシステムを担当している人は「STAR」というサービスを触っていくことになりますが、金融業界では圧倒的なシェアを誇っています。
業務システムはスイッチングコストが大きいので、一度使うとなかなか切り替えができません。
だから高い金を払わざるを得ません。
「おい NRI、お前のところマジ高いから別のところ使うわ」
と言えないのが強いのです。ピーター・ティールが言うように、独占こそが利益の源泉です。
独占だからこそ、
「お前のところ高いけど、切り替えられないから障害起こしたら絶対に許さん」
としか言いようがないのです。 私達が Google の検索結果がクソでも、ググらないわけにはいかないのと同じです。
しかしながら、儲かる事業なら他の会社もガンガン参入してくるはずです。
どうして NRI の独占状態を許してしまっているのでしょうか。 業務知識が複雑すぎるからです。
NRI のシステムを Google や Amazon が作ることは可能でしょう。難しい技術を使っているわけではありません。
技術力だけで見ると、日本のメガベンチャーの方が NRI より圧倒的に上です。 NRI 社員の技術レベルは平均的には情報系の大学院生以下だと思います。特にモダンな技術に精通している人はほぼいないです。
NRI の技術レベルは多くの部署では世間の周回遅れとなっています。古代の技術を使ってます。 スマホの時代に黒電話を使っているようなものです。
つまり、NRI のシステムは、技術的には他の会社でも作れます。
しかしながら、「業務の要件を満たす」システムを作りきって、保守運用するモチベーションを保てる会社はほとんどありません。
技術的には作れても正直作りたくないし、システムを作るために複雑な業務を必死に勉強するモチベーションはわきません。
システムを作るだけでなく、顧客と折衝して、無数の人間が動く中でいちいち調整し、メンバーを管理して、資料を作り、報告するのは相当なマメな人間でないとできません。 NRI 社員の付加価値は技術的なハードスキルではなく、調整や管理、折衝などのソフトスキルにあります。あと、やりきる根性もです。
くっそ面倒くさいことを愚直に一生懸命やる点に、NRI 社員の付加価値があるのです。
アクセンチュアや NTT データなどの SIer は似たようなことをやっていますが、とにかくドメイン知識が複雑怪奇なので、なかなか他社がシェアを奪っていくのは難しいのが現実です。
ドメイン知識が複雑すぎて参入できない
NRI のエンジニアは、とにかく顧客の業務に詳しくなります。 金融系のエンジニアであれば、並みの証券マンよりも証券に詳しいと思われる人もたくさんいます。 証券アナリストを持っている人も多いです。
NRI 社員はとにかく、顧客の業務を徹底的に勉強します。 正直言うと、技術的に尖った人よりも、「システムのことをめっちゃ知ってて、顧客の業務に詳しい人」の方が社内ではずっと頼りにされます。
NRI が作っているようなシステムはものすごく複雑です。
記事では全く伝わらないかもしれないですが、読者が想像する 3 倍くらい複雑です。嫌気が差すほどわけがわからない独自仕様がたくさんあります。
その上、知識はなぜかドキュメントとして「理解できる」形で整理されておらず、人から人へ一子相伝の北斗神拳のように伝えられていくので、習得が非常に困難です。
業務システムは自社だけで完結しません。
外部のシステムからのデータが流れてきて、それを加工して、下に流す...みたいなシステムはたくさんあります。
すると、外部システムの仕様にまで詳しくならなければいけません。
こんな面倒なもん、そのシステムで長年頑張ってきた人でなければ普通にやってられないのです。
めちゃくちゃ手間がかかるし、顧客には怒られるし、スケジュールを詰められるし、絶対に障害は許されない...。 障害が起きたら深夜でも構わず対応する...。
いくら金が儲かってもモチベーション的な旨味が全くないので、誰もやりたがりません。 モチベーションがわかない辛い業務を死ぬ気で頑張るのは NRI 社員のすごいところだと思います。狂気の為せる技でしょう。
スタートアップだとそもそも、こんな複雑な業務をやっていくような人材が集まりません。 スタートアップの年収で NRI みたいなつまらなくて辛くて不毛で複雑仕事を一生懸命やるのはどう考えても割に合いません。
だから、結局、顧客は NRI に高いお金を払っていくしか選択肢がないのです。 顧客が高いお金を払ってくれるから、NRI 社員の年収が高くても利益率は高いままなのです。
今まで作った独占的な業務システムが莫大な利益を生み出し続けてくれています。
ただ、最近になってやっと、FOLIO が NRI の牙城を崩そうと頑張り始めました。
金融系のシステムで近い部分はあると思うので、ある程度 FOLIO で経験を積んでから NRI に転職するのもいいですし、逆に NRI から FOLIO に転職するのもいいと思います。
FOLIO の年収と技術スタック、サービスの内容について調べてみる
FOLIO は toB 向けのサービスが成功したら化けるでしょう。
大口の顧客に恵まれているから
流通系でもセブン&アイグループなどの基幹システムの開発を担っています。
NRI はクジラです。小さな池では泳げない。
NRI 社員は単価が高いので、高い単価を払える大企業が顧客になります。
大企業との癒着は正義です。大企業と癒着して、大企業に尽くし、大企業と離れられない関係になっているからこそ、莫大なシステム開発費が流れてくるのです。
オフショア活用による裁定取引
詳細な数字は知らないし、知っていても語りませんが、オフショア(海外の開発メンバー)と協力会社、NRI 社員の月単価はそれぞれ違います。
当然、NRI 社員の単価が最も高いです。
顧客に工数分の費用を請求するときは、若干色をつけて請求するものでしょう。
人件費の安いオフショアを使うことで、「顧客が NRI に支払った料金」と「NRI がオフショアに支払う料金」に差が出ます。
その差額は当然、NRI の利益になります。
こう書くと NRI 社員が悪者のように見えるかもしれませんが、オフショアもアフショアで、NRI には若干色をつけて費用を請求してきているはずです。 利益を出さないとビジネスはやっていけないからです。
ただ、オフショアの比率を多くしたほうが、単価が安いため、利益は出やすいのは間違いないでしょう。
積み重ねた信用による莫大な錯覚資産
新しいシステム開発をしたいときに、顧客が NRI を引き合いに出してくれるのは、積み重ねた信頼があるからです。
「奴らは高い。でもやってくれる」という信頼があります。歴史と実績があるからです。
また、信頼のある大口顧客がいるのも大きいです。あの会社が使っているんだからうちも使おう、となるのはビジネスではよくあることです。
NRI の先人は優秀です。 野村證券がバックにいたとはいえ、ここまでの大きな信頼を積み重ねてきたのだから。
そして現代の NRI 社員は、その信頼を壊さないように、顧客と共に栄えるために、少々やりすぎと言えるくらい顧客に尽くしまくっているのです。
とにかく顧客優先の文化は、他の会社にはないものです。ストイックすぎて引くレベルです。
顧客にとってはありがたいかもしれませんが、中にいると辛いでしょう。
ただ、常識的に辛い深夜作業や連日の残業をなぜか嬉しそうにやる人が多いので、ちょっと気持ち悪いのですが。
NRI から転職して年収を上げるにはどうしたらいい?
NRI からのステップアップ先は「外資コンサル」「外資 IT」が主です。
30 代は特に、外資 IT に転職して年収を上げる人が多いです。 コンサルに転職した人は忙しくて辛そうなので、外資 IT を目指すのが良いでしょう。
NRI の場合は GM、部長レベルでないと 1800 万超の年収は難しいですが、外資 IT は普通に達成可能です。
外資 IT に転職しましょう。稀に外資金融の IT 部門に転職する人もいます。
ウェブ系に転職する場合は、最初は年収ダウンも覚悟しなければなりません。 年収で対抗できるのはメルカリなどのメガベンチャーに限られてきます。
ベンチャーには絶対に転職しないほうがいいです。ただ年収が下がるだけで、やりがいはありません。
ベンチャーに夢を見るな!やりがいもないし給料も安いブラック環境が現実
NRI に転職するなら今がチャンス
NRI は現在、採用を急拡大中です。 2010 年代後半までは中途採用はそれほど多くありませんでした。
「中途入社です」という人はたまにいましたが、ほとんどが「新卒から NRI でした」という人ばかりでした。
ですが、DX ブームで人手不足が顕著になり、どのプロジェクトもとにかく人が足りない状況になっているため、中途採用を一気に増やし始めたのです。
NRI は一度入社すれば会社が傾かない限り絶対にクビになりません。仕事ができなくてもクビになりません。サボってもクビになりません。 それで年収 1200 万は確実に到達します。
チャンスなので、応募してみましょう。
私が使っていたエージェント →SE・プログラマーの転職『マイナビ IT AGENT』

日本の IT 業界の中ではほぼ確実に年収が上がる転職になります。
また、「NRI 出身」だと、また「プロジェクトマネージャー」として他の会社に転職しやすくなるので、キャリアの中で一度 NRI を挟んでおくのは良い選択肢です。 ただ、良くも悪くも「プロジェクトマネージャー」としてロールが固定されて、プログラマーとしては評価されないので、バリバリコードを書きたい人のキャリアとしては適切ではありません。
マネジメントを頑張りたい人にはすごく良い会社です。